2017.03.09 Thursday
高1、5月。 #15
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「なぁ、哲夫。」
「へいっ!」
「へいってなんだよwww
ちょっと前にキョウちゃんについて聞いた事あったじゃん。」
「ミサワくんは何を言ってるのかな?
ミサワくんには梓先輩がいるじゃん。
二股はダメぇえええ。」
「そんなんじゃないって。
ただあの時、お前が途中でやめた話がずっとひっかかってさ。」
「あの話って?」
「キョウちゃんの彼氏の話。
なんかを見てから
哲夫はキョウちゃんの彼氏が嫌いになったって言ってたじゃん。
何があったん?」
「あの話か。たいした話しじゃないんだけどさ」
「たいした話じゃないなら言えよ。あんな風に話切られたら気になんじゃん。」
「別いいけどさ。つまんねー話しだから今から俺が話すこと、誰にも言うなよ。」
「ああ。」
「前も話したけど、コウジ先輩ってさ、ちょーイケメンで、野球もめちゃくちゃ上手くて、
アタマもすげーいいんだよ。高校、土一行ったし。でさ、家もすげー金持ちで、
なんて言うんだろう、もう非のつけどころがないって感じでさ、
会った時に思ったよ。神様って随分不公平なんだなって。
でさ、なんかこれだけでも凄いのに、コウジ先輩は自分の元に寄ってくる女の子達、
誰に対しても親切でさ、女の子どころか、男女問わず、困ってる後輩とか見つけると、
「どうしたん? 手伝おうか?」なんて気さくに声かけるんだよ。
そりゃモテるよな。でもな、俺、会った時から思ってたんだよ。
この人、いつもニコニコしてるけど、目は笑ってねーよな。
目だけは絶対笑わねーよなって。会った時はそんな印象だったんだよ。」
「で?」
「中1のバレンタインの時、クラスで仲の良かった女の子がずっと前から
バレンタインにコウジ先輩にチョコ渡すんだって張りきってたんだけど、
いざ当日になったら、恐いから一緒についてきてくれって言うわけよ。俺に。」
「笑 哲夫らしいな。で、ついて行ってあげたんだろ?お前の事だから。」
「まあ、な。2年の教室行って、コウジ先輩呼んでもらってそこでチョコ渡してさ。
その時コウジ先輩すげー嬉しそうに言うわけよ。
マジで!?俺、こんなの貰っていいの?
これって手作りなの?すごい。大変だったでしょ。
大切に食べるね。満面の笑顔でそう言って女の子と握手したんだよ。
もうさ、一緒にいった子は天にも昇る顔してたよ。」
「いい話しじゃん。なんでそれで嫌いになるん?」
「聞けって。その日部活が終わって同級生達と家に帰ってたんだけど、
途中まで帰って、部室に給食着を持って帰るの忘れたの思い出してさ、
学校戻る事にしたんだよ。その週末は監督の都合で土日ともにオフでさ、
今日持って帰らなきゃ、月曜日に次の当番に渡せないなって思って。
急いで学校に戻ろうと思って、近道だけど普段通らない暗い細い道を戻ってったら
なんか向こうの方で話声が聞こえてさ、
なんかヤバイ感じがして、俺、とっさに隠れたんだよね。
隠れて見てたら、3年生の不良達の中に、コウジ先輩がいて、
これヤバイんじゃ?助けを呼びに戻った方がってとっさに思ったんだけど、
なんか雰囲気違うんだよね。
にこやかと言うか、仲よさげにに話してると言うか。
で思ったわけよ。
さすがコウジ先輩だなぁ。あんな悪い人達とも仲良くつきあえるんだって。
で、出て行こうと思った時、それは起きたわけ。」
「それ?」
「今日俺が一緒に渡しに行ったチョコケーキを鞄から出して言うわけよ。」
「これ食います?なんか1年の女がくれたんですけど。
手作りですって。」
「いらない。そうっすよね。
こんな気持ちわりーもんな持ってくんなですよね。」
「そういったかと思ったら、
あいつそのケーキの箱を地面に投げつけて、
足で踏んだんだよ。
2回、3回と。」
「それを見てた不良達はゲラゲラ笑ってて、
コウジ先輩も笑ってて、
初めて俺、人間って恐ぇなって思った。
こんな事が出来る人間が身の回りにいるんだって思ったらさ。
恐くて俺ずっとそこに隠れてた。
しばらくしたらコウジ先輩達もいなくなったから、
ケーキの所に行ったんだよ。
ぐちゃぐちゃになったケーキの中にチョコだらけになった手紙が入っててさ、
手紙も破れてぐちゃぐちゃになってさ。
それ見た時なんか耐えられなくってさ。
それから俺はコウジ先輩の事は嫌いになった。
それと同時にあの日目の当たりにした、
今まで見た事なかったコウジ先輩が恐ろしくて
この事は誰にも言えないでいたんだよね。」
「道路に散乱したケーキの残骸と手紙を一生懸命かき集めて、
暗い道を帰ったよ。
あの時憶えたばかりだった「闇が深い」って言う言葉。
この言葉はこういう事を言うんだろうな。
そんな事を思いながら。」
「それからしばらくしてだったかな。
キョウがコウジ先輩とつきあってるって話を聞いたの。
俺、ものすごく心配だったんだよね。
大丈夫なのかなって。
本当言うとさ、俺、キョウの事ちょっとだけ好きだたんだよね。
そんなんもあって、なんて言うかすげー嫌な気持ちになったというか複雑で。」
「ぐしゃぐしゃになって、クリームだらけになった手紙の中に書かれていた文字
今でも憶えてるよ。」
「優しいコウジ先輩が大好きです」って。
#16につづく
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「なぁ、哲夫。」
「へいっ!」
「へいってなんだよwww
ちょっと前にキョウちゃんについて聞いた事あったじゃん。」
「ミサワくんは何を言ってるのかな?
ミサワくんには梓先輩がいるじゃん。
二股はダメぇえええ。」
「そんなんじゃないって。
ただあの時、お前が途中でやめた話がずっとひっかかってさ。」
「あの話って?」
「キョウちゃんの彼氏の話。
なんかを見てから
哲夫はキョウちゃんの彼氏が嫌いになったって言ってたじゃん。
何があったん?」
「あの話か。たいした話しじゃないんだけどさ」
「たいした話じゃないなら言えよ。あんな風に話切られたら気になんじゃん。」
「別いいけどさ。つまんねー話しだから今から俺が話すこと、誰にも言うなよ。」
「ああ。」
「前も話したけど、コウジ先輩ってさ、ちょーイケメンで、野球もめちゃくちゃ上手くて、
アタマもすげーいいんだよ。高校、土一行ったし。でさ、家もすげー金持ちで、
なんて言うんだろう、もう非のつけどころがないって感じでさ、
会った時に思ったよ。神様って随分不公平なんだなって。
でさ、なんかこれだけでも凄いのに、コウジ先輩は自分の元に寄ってくる女の子達、
誰に対しても親切でさ、女の子どころか、男女問わず、困ってる後輩とか見つけると、
「どうしたん? 手伝おうか?」なんて気さくに声かけるんだよ。
そりゃモテるよな。でもな、俺、会った時から思ってたんだよ。
この人、いつもニコニコしてるけど、目は笑ってねーよな。
目だけは絶対笑わねーよなって。会った時はそんな印象だったんだよ。」
「で?」
「中1のバレンタインの時、クラスで仲の良かった女の子がずっと前から
バレンタインにコウジ先輩にチョコ渡すんだって張りきってたんだけど、
いざ当日になったら、恐いから一緒についてきてくれって言うわけよ。俺に。」
「笑 哲夫らしいな。で、ついて行ってあげたんだろ?お前の事だから。」
「まあ、な。2年の教室行って、コウジ先輩呼んでもらってそこでチョコ渡してさ。
その時コウジ先輩すげー嬉しそうに言うわけよ。
マジで!?俺、こんなの貰っていいの?
これって手作りなの?すごい。大変だったでしょ。
大切に食べるね。満面の笑顔でそう言って女の子と握手したんだよ。
もうさ、一緒にいった子は天にも昇る顔してたよ。」
「いい話しじゃん。なんでそれで嫌いになるん?」
「聞けって。その日部活が終わって同級生達と家に帰ってたんだけど、
途中まで帰って、部室に給食着を持って帰るの忘れたの思い出してさ、
学校戻る事にしたんだよ。その週末は監督の都合で土日ともにオフでさ、
今日持って帰らなきゃ、月曜日に次の当番に渡せないなって思って。
急いで学校に戻ろうと思って、近道だけど普段通らない暗い細い道を戻ってったら
なんか向こうの方で話声が聞こえてさ、
なんかヤバイ感じがして、俺、とっさに隠れたんだよね。
隠れて見てたら、3年生の不良達の中に、コウジ先輩がいて、
これヤバイんじゃ?助けを呼びに戻った方がってとっさに思ったんだけど、
なんか雰囲気違うんだよね。
にこやかと言うか、仲よさげにに話してると言うか。
で思ったわけよ。
さすがコウジ先輩だなぁ。あんな悪い人達とも仲良くつきあえるんだって。
で、出て行こうと思った時、それは起きたわけ。」
「それ?」
「今日俺が一緒に渡しに行ったチョコケーキを鞄から出して言うわけよ。」
「これ食います?なんか1年の女がくれたんですけど。
手作りですって。」
「いらない。そうっすよね。
こんな気持ちわりーもんな持ってくんなですよね。」
「そういったかと思ったら、
あいつそのケーキの箱を地面に投げつけて、
足で踏んだんだよ。
2回、3回と。」
「それを見てた不良達はゲラゲラ笑ってて、
コウジ先輩も笑ってて、
初めて俺、人間って恐ぇなって思った。
こんな事が出来る人間が身の回りにいるんだって思ったらさ。
恐くて俺ずっとそこに隠れてた。
しばらくしたらコウジ先輩達もいなくなったから、
ケーキの所に行ったんだよ。
ぐちゃぐちゃになったケーキの中にチョコだらけになった手紙が入っててさ、
手紙も破れてぐちゃぐちゃになってさ。
それ見た時なんか耐えられなくってさ。
それから俺はコウジ先輩の事は嫌いになった。
それと同時にあの日目の当たりにした、
今まで見た事なかったコウジ先輩が恐ろしくて
この事は誰にも言えないでいたんだよね。」
「道路に散乱したケーキの残骸と手紙を一生懸命かき集めて、
暗い道を帰ったよ。
あの時憶えたばかりだった「闇が深い」って言う言葉。
この言葉はこういう事を言うんだろうな。
そんな事を思いながら。」
「それからしばらくしてだったかな。
キョウがコウジ先輩とつきあってるって話を聞いたの。
俺、ものすごく心配だったんだよね。
大丈夫なのかなって。
本当言うとさ、俺、キョウの事ちょっとだけ好きだたんだよね。
そんなんもあって、なんて言うかすげー嫌な気持ちになったというか複雑で。」
「ぐしゃぐしゃになって、クリームだらけになった手紙の中に書かれていた文字
今でも憶えてるよ。」
「優しいコウジ先輩が大好きです」って。
#16につづく
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